こんにちは、山内 (@Bouquetet) です。
去年から今年にかけて、東京オリンピックの食にメダリストたちが抗議をしたり、NYでフォアグラが禁止になるというニュースが流れたことをご存知の方は多いと思います。
こういった報道を見て、「なぜ東京五輪の食事はいけないの?」「なぜフォアグラを食べてはいけなくなってしまうの?」と疑問が湧いた方もいるのではないでしょうか。
実は、その疑問に世界と日本の食のスタンダードのギャップが隠されています。
世界の食への考え方は確実に変わってきています。
※「世界」とはこの記事では欧米やニュージーランド、オーストラリアなどのことを書いています
しかしながら、日本はそういった世界の食の考え方の変化に相当な遅れを取っていると言われています。

目次
日本人が知らない世界の食のスタンダード「アニマルウェルフェア」という考え方
あなたは「アニマルウェルフェア」という概念をご存知でしょうか。
一言で言うと、「家畜も倫理的な生活ができるようにしよう」という考え方です。
結論から言うと、日本が世界に大きく遅れをとっているのがこの考え方についてです。
順番にご説明していきます。
アニマルウェルフェアとは…
感受性を持つ生き物としての家畜に心を寄り添わせ、誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、行動要求が満たされた、健康的な生活ができる飼育方法をめざす畜産のあり方
この考え方は60年代に工業的な畜産を批判したイギリスのルース・ハリソン氏の『アニマル・マシーン』で広まっていった考え方だとされます。
なぜこのような概念が生まれたかというと、単純に畜産がひどい環境下でおこなわれているからに他なりません。
しかし、最近ではこの「アニマルウェルフェア」が世界では意識され、規定や環境が徐々にですが改善されつつあります。
EUや米国は特に進んでおり、中国や南米でも広まり始めていて世界では確実にこの考え方広まっています。
では日本は?というと、
日本の畜産はおどろくほど「アニマルウェルフェア」の観点で遅れをとっています。
これはどういうことか? その事実を説明してくれるのが、昨年(2018年)ニュースになった、メダリストたちの東京五輪の食に対して「徹底抗議」する声明を出した件です。
なぜ東京五輪の食にメダリストが抗議をしたのか
昨年、ロンドンオリンピック銀メダリストのドッチィー・バウシュ氏(米国のサイクリングチーム)を主として世界各国の計20名のメダリスト(2019年11月時点)たちが、2020年に行われる東京オリンピックの食事で使用する卵や肉などの畜産物の「アニマルウェルフェア基準」が低レベルすぎると抗議する声明を発表しました。(声明はこちら)
彼らの要求は以下の2つ。
・卵はケージフリー卵を使う
・豚肉は妊娠ストールという方法を使わないで飼育されたものを使う
これらは畜産動物の飼育環境をはかる上で象徴的なものとされており、今回彼らは「アニマルウェルフェアの最低限の条件」としてこの要求をしました。
この条件について簡単にご説明すると、
ケージフリー卵…鶏をケージに閉じ込めないで飼育する平飼い卵か放牧卵と言われるもの。そうでないものは身動きも取れないような狭いケージのなかで一生を送る。
妊娠ストール…子供を産ませるためだけに飼育される母豚が入れられる、身体がぎりぎり入る大きさの檻のこと。足を伸ばして寝ることも、回転することも、首を持ち上げることもできない。かなりのストレスを与えるため、多くの豚が異常行動を起こす。
写真の出典:アニマルライツセンター
これらの項目は、以前のオリンピックでは配慮がなされていましたが東京オリンピックでは全くの配慮がなされていません。
以下が以前のオリンピックの規定と東京オリンピックの規定のちがいです。
◎ロンドンオリンピック
→放し飼い以上の卵、妊娠ストール禁止
◯リオオリンピック
→ケージ飼育ではない卵、規定はないが大手企業が自主的に妊娠ストール廃止
×東京オリンピック
→飼育方法の基準なし、(ケージ飼育の卵OK、妊娠ストールOK)

世界と日本のギャップ
世界中で「アニマルウェルフェア」の観点からこの2点に関して改善がされてきています。
・「ケージフリー卵」
ケージフリー卵の国内生産の割合は
イギリス:約50%
オーストラリア:約30%
(アメリカはまだ約8%だがカルフォルニア州が州法で従来型ケージを禁止。)
・「妊娠ストール」
妊娠ストールはすでに以下の国や企業で禁止されています。
・EUで全面使用禁止に(2013年)
・アメリカの9つの州、ニュージーランド、オーストラリアで禁止または段階的な禁止
・欧米のマクドナルド、ウェンディーズ、バーガーキング、サブウェイ、スターバックスなど
※いずれも日本国内の店舗は除く
→世間の意識の高まりもあり、「アニマルウェルフェア」がひとつの企業の評価指標ともなっています。
一方、日本はというと…驚愕の事実です。
・ケージ飼育
日本の養鶏場の92%以上が従来型のケージを使用して飼育
・妊娠ストール
日本の養豚農家の88.6%が妊娠ストールを使用(14年農林水産省調べ)
明らかに世界の流れに遅れをとっていることがわかります。
今回の東京オリンピックの食に対する抗議はその事実を改めて明らかにしただけのものだということですね。
NYでのフォアグラ禁止について
もう一つ今年大きな話題になったのが、ニューヨークで2022年からフォアグラ販売禁止が市議会で条例可決したという件。
ここまで読んでいただいたあなたなら、NYのフォアグラ禁止はなぜ起こったかということがすぐに分かるかと思います。
フォアグラの生産は「アニマルウェルフェア」の観点からは大幅にそれた方法でおこなわれており、世界の潮流に合っていないからです。
すでにニューヨーク以外でもフォアグラは禁止になっています。
(イタリア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、フィンランド、ポーランド、ルクセンブルクの各国とオーストリアの9州のうち6州、アイルランド、イギリス、スウェーデン、オランダ、スイスなど)
フォアグラの生産方法はあまりに悲惨です。(こちらに写真を掲載しようかと思いもしましたがやはりショッキングすぎて、見たくない方もいるかと思うので控えます。)
フォアグラ用のアヒルは1日に2〜3回、喉にチューブを入れられ強制的に餌付けされます。
3~4週間で、肝臓は標準サイズの10倍に膨れあがり他の臓器を圧迫するため息をしたり歩くことも難しくなります。
フォアグラの死亡率はフォアグラ用以外のアヒル畜産場の20倍にも上るとも言われます。
※詳しく知りたいという方はアニマルライツセンターの記事「フォアグラの生産方法」をご覧ください。
「アニマルウェルフェア」ではない環境で育った動物の肉は健康によくない?
このように、動物への倫理的な視点から世界に広がりを見せる「アニマルウェルフェア」の考え方ですが、ストレスを受けた動物の肉は人体にとって悪影響があるとする説があるので最後に少しご紹介しておきます。
以下のように、肉は生きている時の状態によって成分が変わってしまうのです。
休息を与えなかった家畜の肉は、異常肉になる可能性があります。疲労やストレスがあると、エネルギーのもとであるATP(アデノシン三リン酸)や、ATPを生産する筋肉中のクレアチンリン酸、あるいはグリコーゲンが減少します。
http://jbeef.jp/daizukan/encyclopaedia/article.html?encyclopaedia_article_id=362
その結果、人体には以下のような影響があるという声も聞かれます。
ストレスを受けた動物の肉は、グルココルチコイドなどのホルモン量が高くなる。グルココルチコイドは経口摂取され、筋肉と骨密度、テストステロン、免疫力の減退につながり、血糖値、心臓血管機能にも影響する上、説明できない精神状態の変動との関連もある。
私たちの感覚的にも、ストレスいっぱいに育った動物のお肉は身体に良く美味しそうだとはなかなか想像できないのではないでしょうか。
私はその本能的な感覚は合っていることが多いかもしれないな考えています。
さいごに
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
「アニマルウェルフェア」という概念についてご理解いただき、最近の「東京オリンピックの食問題」や「フォアグラ禁止」がなぜ起こっているかということがお分かりいただけていれば嬉しいです。
マハトマ・ガンジーはこう語っています。
「 国の偉大さ、道徳的発展は、その国における動物の扱い方でわかる。」
日本食はユネスコの無形文化遺産にも登録された素晴らしい文化なので、これから伸びると予想される日本の観光産業のためにもぜひこの考え方がもっと日本で実践されると良いなと考えています。
ご紹介:
「アニマルウェルフェアについてもっと色々知りたい!」「何か自分にできることがないか?」という方におすすめのサイトはアニマルライツセンターのサイトです。
また、以下からニュースになったオリンピックの食の抗議に署名することもできます。


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