こんにちは、山内 (@Bouquetet)です。
「畜産は環境破壊の主な原因である」という主張についてご存知ですか?
私はこの主張についてNetflixで見られる「COWSPIRACY- 持続可能性の秘密-」というドキュメンタリー映画で知り、菜食を始めるきっかけの一つにまでなりました。
題材にかかわらずハラハラして面白いですし、まさに「目からウロコ」、自分の考え方を変えてくれるような調査や専門家のインタビューがたくさん見られます。(プロデューサーは環境保護のための活動でも知られるレオナルド・ディカプリオです。)
できればより多くの人に見てもらいたいと思うのですが、「見るまでは面倒!」という方もいらっしゃると思うので、そういう方にもざっと分かってもらえればと思って記事にしてみました。
こんな方におすすめ
- 畜産がなぜ「環境破壊の主な原因」か?ピンとこない
- 「環境破壊の主な原因が畜産」なのに、なんであまり言われてないの?と気になる方
この記事では「COWSPIRACY」で語られた、畜産がなぜ「環境破壊の主な原因」か?という内容(衝撃的)を中心に、あらすじも含めてご紹介したいと思います。
目次
「COWSPIRACY」の内容
https://www.cowspiracy.com/infographic
あらすじ(ネタバレなし)
環境問題に興味を持つ主人公。日々節水に気をつけ、自転車で移動をするなどエコな暮らしを心がけているなか、ふと疑問に思う。
「果たしてこの生活は本当に環境破壊を食い止めることにつながるのか?何かもっと見落としている大きな問題があるのではないか?」
そして調査の情報などを調べていくうちに国連やワールドウォッチが出している調査で「畜産は地球温暖化の主要な原因というだけでなく環境破壊につながる資源消費の最先鋒だった」という事実を目の当たりにする。
そこから様々な環境団体や学者にインタビューを行いその真相を探っていくが環境団体は畜産の環境への大きな影響を認めつつも「これは方針だから」などとにごして何かを隠しているような感じだった。
どうもおかしいと感じながらも続けて取材をしていくと「語られることのないタブー」について知る。(後のネタバレ項目でご紹介しています。)
見どころ
冒頭から環境団体の人が言葉を濁して何かを隠しているようなおかしな様子からはじまる。
インタビューが進むうちにだんだん謎が解けていく感じがハラハラするので小難しそうな問題なのに飽きずにみられます。
なぜ説得力があるのか
✔️情報源は国連やワールドウォッチ、権威ある大学教授などで信頼に値する。
✔️インタビュー数が多く、足を運んで色々な人に話しを聞きに行っている。
以上が「COWSPIRACY」の内容についてでした。以下から「なぜ畜産が環境破壊の主な原因なのか?」映画で紹介されていたことを中心に順番にご紹介していきます。
畜産が地球温暖化の主要な原因である
「COWSPIRACY」では結論、「畜産は地球温暖化の主要な原因というだけでなく環境破壊につながる資源消費の最も大きな要因」という事実が述べられています。
地球温暖化の主な原因となっているのが温室効果ガスです。
ワールドウォッチの報告によると、その排出の51%は畜産が原因となっているもの、国連では18~31%が畜産が原因となっているものと発表されています。
という方に..
地球温暖化は重大な環境問題ですよ。
このドキュメンタリーの冒頭では以下のように述べられています。
二酸化炭素濃度の上限は350ppmにすべきだと気候科学者たちは言いますが、現状ですでに400ppmに達しています。気温上昇は地球全体に大きな問題を引き起こす。干ばつや飢饉(ききん)、紛争や種の絶滅です。それを避けるには気温上昇を2度以内に抑えねばならない。でも、すでにそのレベルに達しつつあり現状の大気状態でもいつ超えてもおかしくないだから近々深刻な種の絶滅が起きるでしょう。それは恐竜の絶滅以来の途方もない規模のものになる海面上昇により国全体が沈んでしまったり、大規模な干ばつで食料を供給できず他国を侵略する者も現れるはず。
シエラクラブ 最高執行役員補 ブルース・ハミルトン
また、アメリカの気候研究機関クライメート・セントラルが発表した論文によると、近いうちに間違いなく海水面は上昇し、気温が2度上昇すれば、現在2.8億人の住む土地(ニューヨーク、ロンドン、東京など..)が水の下に没するとされています。
参考:クライメート・セントラルの論文https://sealevel.climatecentral.org/research/reports/surging-seas
沈没の時期を予測するのは大変難しいそうですが、現在の気温の上昇に伴う海面の上昇の推移をみると、200年後にはじまり、浸水はおよそ数世紀、あるいは2,000年間続くと言われています。
これは遠いようで近い未来ですし、人口増加、環境破壊のペースによりもっと早いペースで海面の上昇が進むことも考えられます。
たまに「地球温暖化は起きていない(人間によって起こっているのではない)」という意見を見かけることがありますが、主に人間活動の影響で温暖化が起きているということは、科学者の大部分、少なくともほぼすべての気候科学者の間で合意されています。
参考:地球環境研究センターhttp://www.cger.nies.go.jp/cgernews/201806/330006.html
「COWSPIRACY」で語られる衝撃の事実
COWSPIRACYでは、「畜産が環境破壊の主な原因って?」という疑問に対していくつも理由が挙げられます。(しかも視覚的にわかるアニメ付きでさらに衝撃的です!)
その事実があまりにも衝撃的で初めて知る場合は驚くと思います。
畜産が環境破壊の原因と聞いても、直感的にピンと来る方のほうが少ないと思います。
しかしながら、畜産は私たちの想像の範囲に及ばない以下のような点で実は壮大な資源消費をし、莫大な廃棄物を出しています。
・畜産を行うための土地(例えばアマゾンでは毎秒アメフト場1つ分が切り開かれている)
→動物の餌となる飼料を育てるのに必要な面積を考慮するとびっくりするほど。
・水消費
・家畜の排出するメタンガス
→おならやげっぷ、糞尿から出るガス。家畜の数が多すぎて...。嘘みたいですが実は状況がかなり深刻。
などです。
詳しくご紹介していきます!
温室ガス
先ほどお伝えしたように温室ガスの排出量は地球温暖化の主な原因となっており、とても重要な問題です。
そして、なんと
✔️畜産によるこの温室ガスの排出は、世界中の運輸関係すべての合算(乗用車、トラック、鉄道、船舶、飛行機などすべて)よりも多い
✔️影響力で言えば家畜は車両の86倍
(国連の報告 UN, Food & Agriculture Organization FAO 2013 )
✔️温室ガスの一部である二酸化炭素やメタンの吸収源の減少を考慮した上で人間が起こす温暖化原因の51%が畜産になる予測
とされています。
また、畜産が特に問題なのは温室ガスのなかでも非常に温暖化係数(温暖化への影響度)の高い
・亜酸化窒素
・メタン
を大量に排出してしまうことにあります。
温室効果ガスの排出量は増加して2030年には限界値を超えるはず 他の要素をまったく考慮しなくても畜産だけでそれだけ上昇する
環境研究者 Richard Oppenlander 博士
と専門家は語ります。
✔️畜産で大量に排出される温室ガスの亜酸化窒素は温暖化係数で言えば二酸化炭素のなんと296倍
✔️メタンの排出を減らせばその影響は数十年で出るが、二酸化炭素の場合は排出量を減らしても変化が起きるまで100年はかかる
と、畜産が温室ガスに与える害は半端ではありません。
熱帯雨林の破壊
二酸化炭素を吸い、酸素を出すため熱帯雨林は「地球の肺」とも言われます。
しかし、それが家畜の放牧とその餌を育てるために次々と切り開かれています。
✔️アマゾンの熱帯雨林は今後10年で失われる可能性もある
✔️毎秒アメフト場ほどの広さが失われているほど早いスピードでなくなっている
✔️この影響で毎日100に及ぶ植物や動物、昆虫の種が絶滅している
熱帯雨林の火事のほとんどの原因が畜産やそのエサになる農作物のために人為的に行われるものです。
家畜の排泄物
畜産の問題は、「排泄物」についても深刻です。私はその量が予想をはるかに超えておりこれに驚きました。
✔️家畜の排泄物は人類が出す量の130倍に及ぶ
✔️多くの場合は何の処理もされず垂れ流しになっている
(世界中の海で500カ所以上の酸欠海域を生み出しており、25万平方キロの海域で生物が死滅している)
✔️家畜が排出するガスには強力な温室ガスのメタンが多く含まれている(毎日5678億リットル)
✔️アメリカでは家畜が毎秒なんと53トンも排便している
✔️年間に換算すると莫大な量。その量がどのくらい莫大かというと
「サンフランシスコ、ニューヨーク、東京、パリ、ニューデリー、ベルリン、香港 、ロンドン、リオデジャネイロ、デラウェア州、バリ島、コスタリカ、デンマークの土地をすべて埋め尽くす量」とのこと。(これはアメリカの家畜のみの話!)
水の消費量
水の惑星と呼ばれる地球ですが、実際に飲用できる水というのは全体の0.01%に過ぎないとされており、限られた資源であると言えます。
そして、現在では人口増加の影響で水の使用量が増加し、水不足が頻発する要因となっています。
水不足の地域では干ばつや地下水の減少によって湖や沼が消滅するということも起きており水不足によって引き起こされる環境問題も深刻化の一途をたどっています。
そのため、畜産の生産活動のなかで使う水の量が大量であるということも大きな問題になっています。
「COWSPIRACY」では畜産の水消費について以下のように語られています。
✔️世界の水消費の3割が畜産による(地球の45%を占める量)
✔️家庭での水使用は国内の全使用量の5%、一方畜産では55%に及ぶ(アメリカ)
✔️ハンバーガー1つ食べるのは2か月間シャワーを浴び続ける(2500リットル)のと同じこと
✔️牛肉500gで生産に1万リットルの水が必要
→もし隣人が庭のホースで水を出しっぱなしにしてハンバーガー1個分1万リットルに達すれば周囲が水浸しになる
✔️水の消費量が多い穀物をエサとして使うことも原因
環境問題ではないが食糧不足の原因にもなっている
畜産では大量の水と食糧が使われており、家畜のエサとなる農作物で十分飢えている人たちをまかなえると計算できます。
アメリカではなんと家畜のエサとなる農作物は全体の70~80%、大豆に至っては90%とだとされています。
農作物のほとんどが人間ではなく家畜のエサとして消費されているのですね。
・人口70億人に対し、地球上に存在する家畜はそのおよそ10倍の700億に上る
・今も10億人が飢えに苦しんでる
・人類は毎日200億リットル近い水を飲み約10億キロの食糧を食べる
・一方 15億頭の牛は毎日1700億リットル(人類の8倍以上)の水を飲み600億キロ(人類の60倍)近いエサを食べる
図にしてみると...
70億人に対して15億頭の牛でこれだけ消費してしまうのですね。
そして、映画のなかでこう語られています。
地球上の人類全員に適切な食事を与えることは不可能ではない。 現在 動物に餌として与えている食糧を人間に食べさせればいいんだ。同じ広さの土地の場合どんな環境だろうと植物のほうが生産性は高い。食肉、乳製品、卵の消費を減らせば遺伝子組み換え作物を作っている畑を森に戻せてそこで動物も暮らせる 。
しかし、環境団体はこれらの事実を伝えていない。それはなぜか?
以上が「COWSPIRACY」で伝えられている畜産の環境破壊への影響です。
これだけの調査があれば、畜産が環境へ与える影響は最も大きいと言えますよね。
しかし、主要環境団体はこのメインページに載せるべき情報を載せておらず、天然ガスや石油開発を叩いてばかり。
それはなぜか?
映画を見ていくとその秘密が分かっていきます。
ネタバレ -畜産が環境破壊に与える影響について語られない理由-
どの環境団体へインタビューをしている時も、環境破壊について畜産以外の要因は話すのに、肝心な畜産の環境破壊への影響について質問をすると不自然にごまかしたり、口を閉ざしたりします。
それはなぜか?
とある団体のインタビューで「よくその問題に気がつきましたね。実は…」とその理由について語られます。その内容が
・ブラジルで殺された活動家は1100人以上
・ブラジルでは牛の放牧がアマゾンを破壊するとして森林法の修正に対して批判して声をあげた人の多くが殺された
(ホセ・カルロスなど)
・熱帯雨林で暮らしていた、修道女だったドロシー・スタングという人は畜産業を批判し、結果牧場主に雇われた殺し屋によって銃殺された
ということでした。
その他のジャーナリストなども畜産業界の力について語っています。
ウィル・ポッター(ジャーナリスト/作家)によると...
・畜産業は地球上で最も権力を持つ業界
・産業界と政府の癒着
→産業界のなかでも1番あからさまなのが畜産。
企業の利益に打撃を与えると判断されると大きな抑止力が働く。
(FBIまでが動物と環境保護には大きな抑止力が働くとしている)
・影響力を調べようにも政府は情報提供を拒む
→企業機密など様々な理由を挙げて国民に真実を知らせない。
・自身もテロ対策部により発言などを監視されていた
元農場主ハワード・ライマン(牧場主からベジタリアンに転身した、「マッド・カウボーイ」の著者)と主人公のやり取りも畜産業の力の大きさについて感じさせられます。
家畜を育てる農場の中で私は育った。
… 私は人生の45年間を畜産業に捧げたんだ、だから分かる。
テレビに出た時は食品誹謗防止法にやられた。私は違憲だと思ってるがこの法律の下では基本的に食品について虚偽の中傷をした者を提訴できるんだだが私は番組でウソを言ってない。真実のみを話した。
だが私は畜産業界から訴えられた。5年と数十万ドルを費やしようやくその汚名をすすいだよ。
でも、もし番組出演が今ならどうか?あの時とまったく同じ発言をしたらきっと有罪さ。
当時食品誹謗防止法で私が問われたのは発言の内容が真実かどうかだったでも今なら真実を語ろうとも有罪になり得るんだ。もし畜産業の利益を損なうようなことをすれば終わりさ。愛国者法で有罪になる。
いかに危ないことをしてるか理解してないなら今すぐそのカメラを捨てるべきだね。
途中でもこの映画のスポンサーから「資金提供が難しくなった」と断りの電話がある場面もありました。
それだけ畜産の問題に触れることはタブーだったのです。
主人公は「この映画を作るべきなのか?」と恐怖を感じながらも、このまま地球が危ない状況になることになるなら自分が危ない立場になったとしてもこの映画を作り終え公開することを決意。
そのあと
・サステナブル(持続可能)な肉の供給は現状の技術では不可能
・お肉の量を減らすだけでも環境破壊は止められない
とし、自らが菜食主義になることを誓い、映画を見ている人にも菜食主義になることを勧める。
というお話です。
以上がCOWSPIRACYのご紹介でした。
しかしながら1つの情報に頼るのは危険(さいごに)
ここまで「COWSPIRACY」で紹介されていた調査結果や専門家などへのインタビューをご紹介しましたが、これはあくまで一つの情報源です。
私はこの映画をみた後、反対意見など色々と調べてみた上で畜産の環境破壊への影響についてはやはり甚大だと考えて食肉について考え直しました。
また、できればこの問題について考える人がもっと増えればと思っています。
(最近の調査や反対意見について紹介する記事も書きたいと思っています。)
でも、大切なのは、知らないことについて興味を持って調べて、情報を精査し、その上で自分のスタンスを持つことだと思いますのでぜひ興味が湧いたという方はまずはNetflixで「COWSPIRACY」を見てみてくださいね!
【追記】
こちらの書籍もおすすめです。中立的なスタンスで肉食について調べられていて、人類と肉食の関係について人類誕生の瞬間から考察しています。
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